お坊さんへ納める『お布施』の金額は、ハッキリ言って高いです。
特にお葬式の場合は、少なくても数十万円のお布施が必要になります。
そんな『高すぎるお布施』をできるだけ安くしたいと思いませんか?
じつは、お布施は適切に交渉すれば値下げしてもらえます。
この記事では、
- お布施の金額の相場
- お布施を値切る方法
- お布施の値引き交渉のコツと注意点
を紹介しています。
少しでもあなたの負担が減って、なおかつ、お寺との関係を良好に保つために最後まで読んでみてください。

お坊さんの心理を利用した方法なのでご参考にどうぞ。
この記事を書いている私『ちょっき』は僧侶になって29年です。お葬式を800回以上お勤めしてきた経験をもとに互助会に関する情報を発信しています。
お布施とは
お葬式のときには、必ずお坊さんに『お布施』を納めます。
しかし、そもそも『お布施』とは何なのでしょう?
『お布施』には、大きく分けて、
- 【物質的な施し】:金銭や物
- 【知識・精神的な施し】:説法や声がけなどの行為
の2つがありますが、『お布施』と聞いて多くの人が連想するのは【物質的な施し】の方でしょう。
とても大事なことですが、『布施』は【自発的なもの】であるというのが前提です。
なので、本来ならお布施の金額はあなたが決めていいものなんですよね。
そのため、素晴らしい信念をお持ちのご住職は「お布施は【お気持ち】で構いませんよ。」と言って、あえて金額を決めていません。
でも、多くの人は、



そうは言っても『相場の金額』くらいは払わないとマズイよな・・・。
と思っているんですよね。
ですから、私の場合は「あくまで目安ですけれども・・・」という前置きをしてから、納めてもらいたい金額を正直にお伝えしています。
たぶん、ほとんどのお寺が私と同じように『目安となる金額』をお伝えしているのではないでしょうか。
お布施の金額の相場
お布施については、事前に【金額の相場】を知っておくのがよいと思いますので紹介します。
ただし、本記事で紹介するのはあくまで【全国平均の相場】で、インターネットの僧侶派遣の広告にあるような【破格な金額】は比較対象にしていません。



アレを比較対象に盛り込んでいたら、ほとんどのお寺は潰れますのでカンベンしてください。
仏式でお葬式をする場合は、基本的には故人に【戒名】を授けます。
この戒名がクセ者なのですが、戒名にはいくつかの『位(=ランク)』があります。
そして、故人に授ける戒名の位(ランク)によって納める金額が全然違うので、いわゆる『戒名料』が違ってくるわけですね。



【数十万円】という単位で違ってきます。
そのため、戒名料の金額によってお布施の総額が大きく変わってしまうんです。
ということで、ここでは【一般的な戒名】を授けた前提で話を進めます。
従来のやり方である『お通夜+お葬式』という2日間で執り行う場合の相場は、
30万円~70万円
です。
そして、一部の地域で急増している『一日葬=お通夜無し』の場合の相場であれば、
25万円~65万円
です。
お葬式は、故人と最後のお別れをし、故人を仏様の世界へ送り出す大切な儀式です。
とても大きな出費になってしまいますが、故人にとって最後の晴れ舞台ですから、念のため70万円くらいを考えておいた方が良さそうですね。
お布施を値切る方法と注意点
大変お待たせいたしました、ここからは『お布施を安くする方法』について解説します。
お布施を値切るときは、最初からあなたとお寺の《妥協点》となる金額で交渉してください。



あなたの希望ばかりを通そうとしてはいけませんよ。
最初から【適度な値引きの金額】で交渉した方が、あなたもお寺もお互いに気持ちよく折り合えると思いますよ。
では、【適度な値引きの金額】とは具体的にどのくらいなのでしょう?
最大『20%OFF』を目安にして交渉する
お布施を値切るときは、最大『20%OFF』を目安に交渉をしましょう。
普通のお寺であれば、最大20%OFFくらいなら十分に値切ることができます。
お布施は、物を売るのと違って原価がないため、値引きしてもらえる幅は大きいです。
しかも、先述したように本来ならお布施の金額を決めるのはあなたです。
「よし、じゃあ思いきり値切ってみよう!」みたいに思ったのなら少し待ってください。
お寺から提示された金額に対して、最初から大幅な値引きを要求しない方がいいと思いますよ。
お寺だって「絶対にこの金額を納めてください。」とは言わないものです、というか言えません。
金額の目安を提示をした上で、ちゃんと臨機応変に対応してくれます。
それなのに、最初からいきなり「とにかく半額に下げてください。」みたいに言ってしまうと、その時点で住職さんの気分を害します。
なので、お寺から提示された金額に対して最大【20%OFF】までが値引きの妥協点ではないかと思います。



これ以上の値引きの要求は、その後のお寺との関係悪化が心配です。
お寺としても、20%くらいまでの減収であれば上手くやりくりすれば何とかなりますが、それ以上となると経営に支障が・・・。
世間では《坊主丸もうけ》なんていう言葉もありますが、実際はそんことはありません。
じつは、お寺全体の約7割がシビアな経営を強いられている状況なんですが、こういうところは認知されていないんですよね。
ですから、住職さん達は《信者(檀家)さんの負担》と《寺の維持》の両方を考えて、ギリギリまで抑えた金額の目安を提示しています。
なので、20%OFFくらいで手を打った方が無難ですよ。
そして、僧侶としては、これくらいでどうか許してほしいと思います。
【安くしてくれて当たり前】という態度は厳禁
何度も言いますが、お布施の金額は本来はあなたが決めるものです。
とはいえ、「お布施なんだから、こちらの言い値でやってくれ。」というような【安くしてくれて当たり前】の態度は絶対にヤメましょう。
お坊さんも分かってるんですよね、施主の方が正しいことを言っているのは。
でも、お寺も維持費を確保するのは大変なんです、たくさんの信者(檀家)さんのお墓を守る責任がありますのでね。
それで、申し訳なく思いながらも、やむを得ず金額の目安を提示しています。
そこへ『安くしてくれて当たり前でしょ?』という態度を見ると、お坊さんだって人間であり感情もあるので、カチンときますし、優しくもなれません。
なので、交渉時のコツは、あなたは嫌かもしれませんが、【ご迷惑をおかけして申し訳ない】という態度で臨むことです。



もちろん『申し訳ないフリ』でかまいませんよ。
ここで、交渉時の文言を考えてみました。
故人は生前から住職さんの読経がとても好きでした。
そして、故人はいつも「自分のお葬式のときには、ぜひ住職さんにお経を読んでもらいたい」と言っておりました。
今回、故人の願いを叶えてやりたいと思っています。
しかし、今の我が家は◯◯な状況なので、大変申し訳ありませんが▲▲万円を納めたいと考えております。
それでどうか故人の願いを叶えてやってもらえないでしょうか?
こんなカンジで言われると、お坊さんは「よしっ、わかりました。」となります。



ポイントは「住職さんの読経がとても好きでした」の部分です。
お坊さんといえば『読経をする人』というイメージがありませんか?(※読経というのは、文字どおり『お経を読むこと』です。)
じつは、それはお坊さんにとっても同じです。
お坊さんにとって『読経』というものは『自分自身』そのものなんです。
ですから、読経を認めてもらえたり褒めてもらえると、じつはメチャクチャ嬉しいので、交渉をするときにそこを責めない手はないのです。



少しだけ《おだてて》あげてください、成功率はかなり上がるはずですから。
以上を念頭に置き、できるだけ具体的な理由(経済的な事情・故人の強い遺志など)を付け加えて交渉してみてください。
相場より高ければそれを指摘する
お寺から提示されたお布施の金額の目安が『明らかに相場よりも高額』である場合もあります。
そんな場合はしっかりと値引き交渉をしてかまいません。
とはいえ、残念ながらもともと相場より高額なものを相場以下まで値引きすることは困難でしょう。
なので、ここでは【相場の金額くらいまで値引きをする方法】を紹介します。
まず、お寺のある地域(都道府県レベルでOKです)のお布施の相場を調べます。さらに、もっとお寺の近くの地域の相場を調べられると最高です。
そして、お寺から提示された金額が明らかに相場よりも高額である場合は、住職さんに【相場よりも高い理由】を尋ねてみてください。



これはかなり勇気が必要ですが、大事なことなんです。
それで、あなたが納得できるような理由が返ってくれば、そのまま提示された金額で納めるか、先ほどの20%OFFの方法へ移行です。
反対に、「ウチは昔からこの金額で・・」とか「他のみなさんにも同じように納めてもらってますので・・」のように納得できる理由がない場合は、
我が家はこちらのお寺様と今後も末永くお付き合いをさせていただきたいと思っています。
しかし、恥ずかしながら我が家は今◯◯な状況なので、こちら近辺の相場である▲▲万円ほどでお願いしたいのです。
大変失礼かとは思いますが、ご理解をいただけないでしょうか?
と言ってみてください。これで了承してくれると思いますよ。
しかし、どれだけお願いをしても高額なお布施を要求するようなお寺なら、そのお寺との付き合いを解消することも考えなければいけません。



信者さんの事情を無視するようなお寺に未来はありません。
そんなお寺の檀家でいると、あなただけでなく【後代の人たち】も苦労をすることになります。
そもそも、あなたが今『お寺の檀家』であることを望まないのであれば、もっと低価格で自由にお墓を使うことができる【霊園】などにお墓を移すことを検討してもいいでしょう。
お布施以外の寄付などにも注意
よくあることなのですが、お葬式のときに、お布施の他にも『寄付』を要求しているお寺があります。
お寺から、
「お葬式のお布施は◯◯万円くらいを目安に納めてください。」
と相場よりも安い金額を言われてホッとしていたら、
「それから、お布施とは別にご寄付を◯◯万円くらいお願いします。」
と、追加で要求されるのです。
お布施と寄付を合計すると、結局は相場と同等かそれ以上の金額になってしまっていることもよくあります。



同業の私が言うのもなんですが、まるで【詐欺】みたいなやり方です。
念のためにお伝えしておくと、この記事で私が『お布施』と言っているのは、読経料や戒名料のことだけではありません。
寄付はもちろん、お車代や御膳料などを含めた《お寺へ納める費用すべて》を『お布施』と表現してます。
なので、寄付などを別に要求された場合は、【すべてを合計した金額の最大20%まで】で値引きの交渉をしてください。
値引き交渉をしないでほしいケース
値引き交渉に関して、あなたに1つお伝えしたいことがあります。
これは、私からの【僧侶としてのお願い】でもあります。
もしも、あなたとお付き合いのあるお寺が、すでに相場を下回った金額を提示しているのであれば、もうそれ以上の値引き交渉はしないであげてもらえませんか?
はじめから相場を下回っているなんて、それだけでも十分に【信者(檀家)さん想いの良いお寺】です。
お布施が相場より安いお寺というのは、じつは近隣のお寺にとっては『迷惑な存在』になっているんですよね。
そりゃそうです、「すぐ近くの◯◯寺さんの方が安いけど、何がそんなに違うんですか?」って話ですから。



良心的なお寺は近隣のお寺からチクチクと嫌味の1つくらいは言われます。
それにもかかわらず、信者さんの負担を減らすために相場を上回らないようにしているのですから、そのあたりをどうぞご理解ください。
あとは、葬儀社から紹介してもらったお寺に対しても値引き交渉はしないであげてもらえませんか?
ほとんどの葬儀社には、宗派ごとに【提携寺院】があります。
お葬式をするにあたり『お付き合いをしているお寺がない』という人も多いので、喪主の要望があれば、葬儀社はそれらの提携寺院にお葬式を依頼します。
そして、喪主が納めるお布施の金額は葬儀社が決めているんですよね。
さらに、葬儀社は喪主の負担を減らすため、お布施の金額をギリギリまで安く設定します。



喪主(お客様)のことを考えれば当たり前のことですね。
提携寺院としては、葬儀社によって設定された金額を喪主から受け取るしかありません。
さらに、喪主から受け取ったお布施の中から、『協賛金』などと称して葬儀社へ定率のバックマージンを返しています。
そうすると、実際にお寺へ入るお布施はグッと減ってしまうんですよね。
ですから、
- すでに相場を下回った金額を提示しているお寺
- 葬儀社から紹介されたお寺
に関しては、よほどの事情がない限り値引き交渉はしないでいただきたいなと思います。
まとめ
お布施は適切に交渉すれば値下げしてもらえます。
具体的な目安として『お寺が提示した金額の20%OFFまで』くらいであれば値引きは十分に可能です。
また、交渉時には【お経を褒める】とか【不明瞭な点を指摘する】というような攻め方をしてください。
そして、無事にお布施を安く抑えられたら、せっかくなのでその分は家族で旅行とか豪華な食事を・・・しないでくださいね。
私がこの記事を書いたのは、安く抑えられた分を、今後の故人の供養に使ってほしいからなんです。
例えば、仏壇の中にある仏具を新調するとか、お墓に供えるお花を少し豪華にするとか、命日には必ず塔婆を建てるようにする、とかです。
安く抑えられた分の全部とは言いません、その中の一部で構いませんから、ぜひ故人の供養のために使ってあげてください。
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