お葬式では、遺体を火葬場まで運ぶために『霊柩車』を使用します。
しかし、霊柩車を使用するにあたり、
- どんな霊柩車があるのか
- 費用はどのくらいなのか
- そもそも霊柩車自体が必要なのか
といった疑問が出てきますよね。
霊柩車はいくつか種類があるため、お葬式の雰囲気や参列する親戚の人数などに合わせて選ぶことが大切です。
この記事では、現役僧侶の私が、
- 霊柩車とは何か
- 霊柩車の種類
- 霊柩車の費用
について解説しています。
葬儀社の【葬儀プラン】や互助会の【契約コース】には霊柩車の項目が入っていますので、本記事を参考に霊柩車の内容を確認してみてください。
故人にとっては『最後に乗る車』なので、よく考えて選んであげましょう。
霊柩車って何?
霊柩車とは『遺体が納められた柩を火葬場まで搬送する車』のことをいいます。
柩を乗せられるように普通の車よりも車長が長く、車の色はほとんどが黒、グレー、シルバーです。
また、遺体を乗せる車であるため【特殊用途自動車】に該当し、業務用車となるので【緑色の『8』ナンバー】を付けています。
その他にも、前のドアの下あたりに『霊柩』あるいは『霊柩限定』と記載されているのも霊柩車の特徴です。
霊柩車を自社で所有している葬儀社は、霊柩限定の《一般貨物自動車運送事業》の許可を受けて運営しています。
しかし、霊柩車を運転するスタッフは特別な免許や資格を持っているわけではありません。
遺体というのは法的には【貨物=モノ】となり、貨物を運ぶ普通車であれば普通一種免許でも運転ができるため、霊柩車は葬儀社のスタッフが運転するケースがほとんどです。
タクシーやバスのように人を乗せるための『二種免許』は必要ないんですね。
霊柩車の種類
霊柩車には、
- 宮型(輿型)
- 洋型(リムジン型)
- バン型
- バス型
があり、それぞれに特徴や用途がありますので確認しておきましょう。
宮型(輿型)
多くの人が【霊柩車】と聞いて思い出すのは、下の画像のような『宮型(輿型)霊柩車』でしょう。
宮型の霊柩車には、『唐破風』の屋根があって豪華な彫刻や金箔などが施された【輿】がついており、車体後部にある柩を出し入れする扉は【観音開き】になっています。
宮型霊柩車でよく使用される車種は、
- クラウン
- センチュリー
です。
以前まで使用されていた霊柩車の多くは宮型で、走行していると非常に目立つので、500メートル先からでもその存在を確認できるくらいでした。
なぜ宮型の霊柩車には輿がついているのでしょう?
昔は、お葬式のときに柩を輿に納め、それを参列者たちで担いで火葬場や墓地へ運んでいました。
そのなごりで霊柩車にも輿をつけ『宮型霊柩車』として使用していたんですよね。
でも、その外見は【お葬式=人の死】を強く意識させてしまうので敬遠されるようになりました。
また、宮型霊柩車の輿は複雑な彫刻や金箔が施されているので、それをキレイな状態で維持するにはたくさんの費用がかかります。
さらに、宮型というのは和風の作りであるため、仏式や神式以外の宗教では使用できず、コストが大きい割には使用に制限があるのです。
葬儀社としてもコストの削減をしなくてはいけませんので、徐々に宮型霊柩車の使用を控えるようになりました。
このようなことから、現在では宮型霊柩車を使用する人は激減し、代わりに後述する洋型(リムジン型)の霊柩車が使用されています。
洋型(リムジン型)
近年では、宮型霊柩車を使う人はあまりいません。
その代わりに、下の画像のような『洋型(リムジン型)霊柩車』が使われています。
洋型霊柩車には宮型のような輿がついておらず、飾りがほとんどなく落ち着いた色合いの外見になっています。
洋型霊柩車でよく使用される車種は、
- クラウン
- センチュリー
- ベンツ
- ボルボ
- キャデラック
など、国産車だけでなく外車もよく使用されます。
私の印象としては、特にベンツの霊柩車が増えているように思えます。
じつは以前、葬儀社スタッフさんに『ベンツの霊柩車が多い理由』を尋ねてみたんですよね。
すると「霊柩車を製造する自動車メーカーが減ってしまい、限られた車種の中から購入せざるを得ないんです。」と教えてくださいました。
洋型霊柩車は仏式や神式だけでなく、すべての宗教、あるいは無宗教のお葬式でも使用できるので便利です。
洋型ならあまり目立たないので、霊柩車を見た人を不快にさせることも少なくてすみます。
車両の維持管理についても、普通の車を管理するのとあまり変わらないのでコスト面でも優れており、葬儀社としても使いやすいのです。
バン型
霊柩車には、宮型や洋型の他にも『バン型霊柩車』もあります。
バン型霊柩車として使用される車種は、
- アルファード
- エスティマ
などです。
バン型霊柩車は、見た目には自家用車とまったく変わりませんので、他の人にはそれが霊柩車だとほぼ分かりません。
バン型霊柩車は、とにかく霊柩車だとバレたくない人が使用したり、家族葬など参列者が少ない規模の小さなお葬式で使用されることが多いです。
バン型霊柩車は遺体を病院から自宅まで搬送するときの【寝台車】として使用されることもあります。
バス型
霊柩車には遺族が同乗しますが、乗ることができるのは基本的に1~3人までです。
しかし、遺族だけでなく他の参列者も乗せることができるのが『バス型霊柩車』です。
バス型霊柩車にはマイクロバスが使用され、乗車できる人数は28名までとなっており、柩については貨物収納スペースを改造した場所へ収められます。
バス型霊柩車は、参列者に移動の負担をかけないようにするために使用されます。
特に雪国の場合、葬儀式場と火葬場の往復が大変なので、参列者みんなで一緒にバスに乗って移動した方が効率も良いのです。
霊柩車の費用
霊柩車を使用するには費用がかかります。
霊柩車の費用は、霊柩車の種類や走行距離あるいは待機時間によって変わります。
霊柩車の『運賃』については国土交通省の指導のもと決められているので、葬儀社が勝手に、
- 法外に高い料金
- 格安料金
- 無料
などの不適切な金額に設定することはできません。
霊柩車のレンタル料金については、基本料金として走行距離が0km~10kmで【15,000円~30,000円】くらいとなっています。
走行距離が10kmを超える場合は延長する走行距離に応じて追加料金を支払い、だいたい10km延長するごとに3,000円~5,000円くらいが目安です。
また、走行距離以外にも、
- 有料道路料金
- 車両留置料金
- 人件費
- フェリー利用料金
- 冬期割増料金
など、霊柩車の利用状況によって発生する追加料金もありますので要注意です。
ただし、霊柩車の使用料金については葬儀社ごとで違いますので、事前に葬儀プランや互助会の契約コースで確認しておきましょう。
霊柩車と寝台車は違う
遺体を搬送する車は霊柩車だけではありません。
病院で亡くなった場合、速やかに遺体を他の場所(自宅や葬儀式場の安置室)へ搬送しなくてはなりません。
亡くなったばかりの遺体を搬送する車のことを『寝台車』といいます。
勘違いをする人が多いのですが、霊柩車と寝台車は違うものです。
寝台車は遺体を担架やストレッチャーに寝かせた状態で乗せるので『寝台車』といい、霊柩車は遺体を収めた柩を乗せるので【霊柩車】というのです。
寝台車を使用するには、霊柩車と同じように費用がかかります。
お葬式が終わるまでには、寝台車と霊柩車の両方の利用料金が必要となるわけです。
自分の車で運んでもいいの?
霊柩車や寝台車を利用するには費用がかかります。
こう言うと、たまに「家族の遺体を『自分の車』で運んであげるのはダメなの?」と思う人もいます。
必ず『死亡診断書』を所持していることが条件にはなりますが、霊柩車や寝台車を使用せずに自分の車で遺体を搬送することは法的には可能です。
しかし、亡くなったばかりの遺体は適切な方法で搬送をしないと、体液などが漏れ出して遺体や車を汚してしまいます。
また、火葬をするには【遺体が棺桶に入っていること】が必須条件となっており、しかも火葬場に到着する時点で遺体が柩に納められた状態でなければいけません。
遺体や棺桶を安定させて搬送するのは、簡単そうに見えてじつは意外と大変なのです。
霊柩車には、柩を固定するためのストッパーがあったり、柩をスムーズに出し入れできるようにローラーが付いています。
しかし、自家用車にはストッパーがありませんので、急発進や急ブレーキによって柩が動いて遺体が損傷する可能性があります。
また、自家用車にはローラーもないため、重い柩を出し入れするときは数人がかりとなり、柩を持つ人に大きな負担をかけるだけでなく、車にも傷や汚れがついてしまうでしょう。
火葬場への搬送後には、いよいよ本当に最後のお別れになるのですから、故人を丁重に送り出すためにも、遺体の搬送は専門スタッフに任せ、ちゃんと霊柩車や寝台車などの専用車両に乗せてあげましょう。
まとめ
遺体を搬送する『霊柩車』には、
- 宮型(輿型)
- 洋型(リムジン型)
- バン型
- バス型
などの種類がありますので、それぞれの特徴や用途を理解した上で選びましょう。
霊柩車を利用するには、15,000円~30,000円程度の利用料金がかかりますが、利用条件によってはさらに追加金が発生することもありますので注意してください。
霊柩車や寝台車を使用せず、自分の車で搬送することは法的には可能ですが、遺体を汚したり損傷させてしまうリスクがあるのでヤメた方が無難です。
遺体の搬送については、お金はかかってしまいますが、葬儀社に任せて、適切に丁寧に搬送してもらいましょう。
※互助会のコース内容についてはこちらの記事をご参考にどうぞ。