この記事では、現役僧侶の私が『家族葬にかかる費用』について詳しく解説しています。
遺族をはじめ【故人と近い関係にある人】だけが参列するお葬式を『家族葬』といいます。
家族葬は一般的なお葬式と比べて費用が抑えられるということで、近年では多くの人の注目を集めています。
もしかしてあなたは「家族葬なら数十万円あればできる。」と思っていませんか?
残念ながら、あなたが期待するような金額で家族葬はできないでしょう。
家族葬の費用の相場は110万円程度とされており、ここに僧侶へのお布施を合わせると実際には『130万円~180万円』くらいになるでしょう。
いざというときになって「家族葬なのに、思った以上に費用がかかる!」と慌てることのないように、費用がどのくらい必要なのかを正しく理解しておくことが大事です。
お葬式に向けた準備をより正しく行うために、ぜひ最後まで読んでみてください。
家族葬とは
一般的にお葬式といえば、
- 遺族
- 親戚
- 友人
- ご近所の人
- 職場関係の人
などが参列し、大勢の人たちで故人を見送ります。
しかし、近年では、遺族や一部の親戚など【故人と近い関係にある人】だけでお葬式を執り行う『家族葬』が急増中です。
家族葬は参列者が限定されるため、
- 飲食代が少なくてすむ
- 返礼品が少なくてすむ
- 小さな式場の使用料金ですむ
といった費用面のメリットがあります。
また、参列者の数が少ないということで精神面でもラクになります。
喪主や遺族は家族を亡くして心に大きなストレスを抱えている中で、さらに参列者に対して気配りをしなくてはいけません。
しかし、ある程度気心の知れた人たちだけが参列する家族葬ならストレスを軽減できます。
そして、お葬式というのは、じつは参列する側もいろいろと気を使います。
お葬式の知らせを受けたら、急きょ時間を調整し、慌てて喪服と御香典の用意をし、お葬式当日もマナーに気をつけて行動しなくてはならず、これが意外と大変なんです。
ですから、参列者を限定した『家族葬』は遺族と参列者の両者にとってメリットがあるんですよね。
ただし、一部の人からは「最後にお別れをしたかったのに!」というクレームがくるかもしれませんよ。
家族葬の参列人数は平均で約20人で、少し前までの一般的なお葬式だと100人以上は普通でしたから、家族葬はかなり規模を縮小したお葬式といえます。
それくらい参列者の数をグッと減らしていれば、お葬式の費用だってそれ相応に抑えられそうですよね。
しかし、残念ながら、仮に参列者が半分に減ったからといって、費用が半分になるわけではありません。
家族葬でもそれなりに費用はかかりますのでご注意ください。
家族葬の費用は実際いくら必要か
故人と近い関係にある人だけが参列をする家族葬。
参列者が少ないため、一般的なお葬式よりも費用は抑えられますが、あなたが期待するほど安くはならないかもしれません。
家族葬の費用の相場
まずは家族葬の費用の相場をお伝えします。
統計によると、家族葬の費用の平均は約110万円です。【※参考:鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査」(2022年)】
一般的なお葬式の相場がだいたい150万円~200万円ですから、家族葬の方が費用は抑えられるように思えますよね。
しかし、家族葬の相場である約110万円には、僧侶へ渡す『お布施』が含まれていません。
日本のお葬式のほとんどは【仏式】であるため、お葬式をするには僧侶への『お布施』が必要です。
お布施の費用を追加すると、家族葬でも実際のところは『130万円~180万円』くらいはかかります。
『家族葬なら費用が安い』の過度な期待に注意
家族葬であれば一般的なお葬式よりも費用を抑えられますが、多くの人が期待をしているほど費用の削減はできません。
たまに「家族葬なら数十万円あれば大丈夫でしょ?」と思っている人がいますが、それは過度な期待です。
たしかに、やろうと思えば数十万円でも家族葬はできますが、あまりにも質素すぎて【納得のいくお葬式】にはならないでしょう。
参列人数が減ったとしても、返礼品や料理の数が減るだけで、祭壇や棺桶など必要な物の費用は変わりません。
参列人数が少なければ小さな式場を利用し、その分だけ『式場使用料』を抑えられますが、それもたかが知れています。
参列人数が少ないからといって祭壇まで小さくすると、一気に式場全体が【質素】な雰囲気となり、露骨に《ケチった感》が出てしまうので、それは故人だけでなく参列者に対しても失礼です。
お葬式は故人の『最後の晴れ舞台』ですから、故人の尊厳を守るためにも、必要なところにはちゃんとお金を使い、後悔のないお葬式をすることが大事です。
必要なところにお金を使っていくと結局は『130万円~180万円』という金額になってしまうんですよね。
また、家族葬ということは参列者が少ないので、それだけ【御香典】が集まりません。
御香典が集まらないということは、喪主が負担する費用が多くなります。
家族葬とはいえ、故人と参列者に対して失礼のないようにするには、実際のところ数十万円では足りないんですよね。
ですから、『家族葬なら費用が安い』という魅力的なフレーズへの過度な期待は禁物です。
格安葬儀への過度な期待にも注意
過度な期待について注意点がもう1つ。
チラシやWebサイトなどを見ていると、よく『お葬式が○.8万円~』といったような【格安葬儀】の広告が出てきます。
格安葬儀の広告の中には、数万円程度でお葬式ができるような表現をするものもありますが、実際には数万円では【納得のいくお葬式】はできません。
故人の尊厳を守り、悔いのないお葬式にするためには、他にいくつもメニューを追加せざるを得なくなり、結局は一般的な金額になってしまうんですよね。
格安葬儀の広告はとても魅力的に見えますが、最終的には一般的な金額と大差のないことが多いので、過度に期待をしすぎないようにご注意ください。
《参考記事》:安さだけで選ぶと大後悔。格安葬儀でトラブルになる事例と理由
家族葬の費用の大まかな内訳
家族葬に限らず、お葬式をするときに必要な費用があります。
ここからは、家族葬でどのような費用が必要なのかを紹介します。
基本的な葬儀一式の費用
家族葬であっても、式の内容については一般的なお葬式と同じです。
お葬式をするには、
- 式場の使用料
- 寝台車・霊柩車の使用料
- 枕飾り、仏衣類の費用
- 棺桶の費用
- 祭壇の費用
- 遺影の費用
- 人件費
などが必要になります。
これらの基本的な費用は『葬儀一式費用』と呼ばれ、家族葬でも必要な費用です。
仏事系のWebサイトでよく「葬儀費用の平均は○○万円です。」と掲載されていますが、【葬儀費用】というのは葬儀にかかる全部の費用のことではありません。
いろんなWebサイトで掲載されている【葬儀費用】というのは、基本的な費用である『葬儀一式費用』を指し、飲食代などの《接待費》や僧侶へ渡す《お布施》が入っていないことが多いです。
ここを勘違いしたままだと、お葬式のときになって支出が大きく変わってしまい、予想以上の出費で慌てることになります。
家族葬の費用を調べるときは『葬儀費用』に何が含まれているのかをよく確認してください。
飲食の費用
お葬式では、参列者のために『通夜振る舞い』や『精進落とし』などの食事の席を設けます。
お葬式での飲食代は《参列者の人数》と《料理の内容》によって大きく変わりますが、家族葬の場合は平均で【15万円~22万円】です。
費用のことだけを考えれば『食事そのものを省略する』という選択肢もありますが、食事を振る舞うのは参列者に対する【礼儀】だと思いますよ。
それに、食事を振る舞うことで参列者にお礼をするだけでなく、参列者と食事をしながら【家族も知らなかった生前の故人の様子】を聞くこともできるのです。
忙しい中せっかく来てくれた参列者に対して失礼のないよう、簡単でもいいのでちゃんと食事をしてもらいましょう。
参列者に対して礼を欠くことは、故人の顔に泥を塗ることにもなりますよ。
返礼品の費用
お葬式が終わると、必ず参列者に『返礼品』を渡します。
これは食事の席を設けるのと同じように、返礼品を渡すことは参列者への礼儀というか、もはや『遺族の義務』と言ってもよいでしょう。
参列者を手ぶらで帰すなんていうのは失礼極まりないことですから『返礼品を省略する』という選択はありません。
返礼品の費用は《参列者の数》と《返礼品の内容》によって変わりますが、平均で【16万円~24万円】です。
返礼品を選ぶときは、できるだけコンパクトで軽いものにすると参列者の負担が減りますので、缶やビンが使用されているものは避けるようにしてください。
返礼品は意外と【お葬式の印象】に影響します。
僧侶へ渡すお布施
多くの人が葬儀費用として見落としがちなのは、僧侶へ渡す『お布施』です。
日本のお葬式の多くは『仏式』なので僧侶に来てもらう必要があり、そのため『お布施』も発生します。
そして、この『お布施』の金額がかなり大きく、
- 戒名(法名)なし:20万円〜30万円
- 戒名(法名)あり:35万円〜150万円
くらいが平均でしょう。
故人に戒名(法名)を付ける場合は『戒名料』が必要ですが、戒名料というのは宗派や地域、そして戒名のランクによって大きく変わります。
一方で、戒名を付けない場合は供養料(=読経料)だけですむので、お布施の金額はあまり変わりません。
ただし、故人に戒名(法名)を付けないのであれば、そもそも仏式でお葬式をする必要がないので、場合によっては僧侶が来てくれないこともあります。
もしも【日頃から付き合いのあるお寺】がない場合は、まず『仏式のお葬式』にするかどうかを家族で話し合って決めましょう。
どんなお葬式にするかは遺族が決めること。無理に仏式にする必要はありませんよ。
葬儀費用を抑える方法
ここまで読んでくださったあなたは、家族葬でもそれなりに大きな費用が必要だとご理解いただけたでしょう。
しかし、大きな費用が必要ならば、なおのこと「もっと費用を抑えたい。」と思いますよね?
ここからは、家族葬の費用を抑える方法をお伝えします。
一日葬にする
お葬式というのは基本的に《お通夜式》と《お葬式》を執り行います。
しかし、近年では《お通夜式》をせずに《お葬式》だけを執り行う『一日葬』という葬儀形態があります。
一日葬にすることで、
- お通夜式分の式場使用料を削減できる
- お通夜後の料理(通夜振る舞い)の費用がない
- お通夜式分のお布施が減る(減らない可能性もあり)
などのメリットがあり、これらだけでも10万円以上の費用の削減が期待できます。
また、一日葬なら日程がお葬式の1日だけなので心身ともに【疲労を軽減できる】という点もメリットです。
お葬式の質を落とさず、なおかつ費用を抑えたい場合は、思い切って『一日葬』にしてみるのもよいと思います。
公営の式場を利用する
お葬式をするには『葬儀式場』が必要です。
葬儀式場には、
- 公営式場:自治体の運営する式場や火葬場(式場併設)など
- 民営式場:葬儀社の所有する専用ホールなど
があります。
費用を抑えたいなら【公営式場】を利用するのも1つの方法です。
公営式場は自治体が運営しているため、民営式場よりも使用料金が安いのです。
ただし、その式場がある市区町村の住民だけが安く使用できるというケースが多いので、公営だからといって必ず安くなるとは限りません。
また、公営式場や火葬場(式場併設)の場合、
- 宿泊ができない
- スタッフの数が少ない
- 改修されず古い設備のままになっている
- 火葬場併設の式場の場合、他のお葬式の人たちがいて騒がしい
などのデメリットがあります。
さらに、公営式場は使用料金が安いことから人気があり、なかなか予約が取れずお葬式の日程がずっと先(1週間~10日間以上)になることもザラにあるので注意しましょう。
公営の火葬場で火葬する
故人の姿が見られなくなるのはとても悲しいですが、日本では遺体を火葬しなくてはいけません。
火葬場には『公営』と『民営』がありますが、お葬式の費用を少しでも抑えたい場合は【公営の火葬場】で火葬をしましょう。
火葬場の費用は公営と民営で違いがあり、
- 公営:1万5千円程度
- 民営:3万5千円程度
となっています。
ただし、葬儀式場と同じように、その火葬場がある市区町村の住民だけが安く利用できるんですよね。
そのため、他の市区町村にある公営の火葬場を利用しても、費用としては民営の火葬場とほぼ同じなので注意しましょう。
また、公営と民営では費用面の他にも、
- 公営:入り時間にとても厳しい。施設内の設備が古くて使いづらい。
- 民営:入り時間は柔軟に対応。施設内の設備が新しくキレイで使いやすい。
という違いがあります。
特に【入り時間】には要注意です。
公営はとにかく【入り時間】に厳しく、1秒でも遅れると葬儀社は火葬場スタッフから強くお叱りを受け、さらには最後の《お別れのお焼香》が強制的にカットされます。
一方で民営は【入り時間】には柔軟に対応し、少しくらい遅れても問題なく、もちろん《お別れのお焼香》もできます。
公営は費用が安いため利用者が多く、火葬炉の数もあまり多くはないので時間に厳しくなるんですよね。
民営の場合、利用者は【お客様】ですから対応は非常に柔軟で丁寧ですし、火葬炉の数も十分にあるので、それほど時間に厳しくはなりません。
公営の方が費用は安いですが、時間ばかり気にしてお葬式をするのはいかがなものでしょう?
飲食費を抑える
お葬式にかかる費用で意外と大きいのが『飲食費』です。
参列者へ振る舞う料理には、お通夜式後の【通夜振る舞い】と、お葬式後の【精進落とし】があるので、両方合わせると飲食費だけでも20万円~40万円くらいかかります。
個人的にはあまりおすすめできませんが、参列者1人あたりの予算を1,000円程度削るなどして《料理の質》を少し下げれば、トータルで数万円の費用を削減できます。
ただし、料理の質を下げすぎると参列者に失礼となるだけでなく、後になって「あの料理はダメだよね。」と陰口を言われるリスクもあるので注意してください。
補助制度を利用する
お葬式の費用を抑えるには、『行政からの補助を受ける』という方法もあります。
故人が国民健康保険や社会保険、または共済組合に加入していた場合、葬儀費用の補助制度があるので、自治体や組合で定められた給付金を受けられます。
ただし、お葬式の翌日から2年以内に申請をする必要があるため、お葬式後に少し落ち着いたら、早めに自治体または組合の窓口で申請しましょう。
支給額は自治体ごとに違いますが、国民健康保険の場合は3~7万円程度の給付を受けられるので、故人が住んでいた自治体や加入していた組合に申請をしてください。
申請にあたり、喪主が申請をする場合は、
- 申請書
- 故人の保険証
- 銀行口座が分かるもの
- マイナンバー
- 喪主の印鑑
が必要です。
無事に申請が終わると2ヶ月程度で給付金が口座へ振り込まれます。
給付の申請をするときには【資格喪失手続き】を一緒に済ませるといいですよ。
互助会に入会してお葬式の準備をしてみては?
お葬式は突然やってくるものですから、そのときになって多くのことを短時間で判断して決めなくてはいけません。
じっくりと考える時間がないので、ほとんどの人は何となく決めてしまったり、不要なものまで入れてしまい費用がどんどん膨らんでいきます。
これは家族葬でも一般的なお葬式でも同じことです。
いざというときに慌てないよう、事前にお葬式の知識を入れておき、合わせて今のうちから費用の準備もしておきましょう。
それには『互助会に入会しておく』というのが有効な方法です。
互助会の入会時には契約コースを決めることになりますので、そのときにお葬式で必要なメニューをじっくりと考えて選ぶことができます。
また、互助会で事前に積み立てをすることにより、いざというときの急な大出費を軽減できます。
さらに、互助会に入会していれば、大幅な割引きを受けられるため、たとえ同じ金額を支払ったとしても内容がかなり豪華なものになります。
金額に多少の差はあれど、家族葬も一般的なお葬式も【大きな費用がかかる】という点では同じなのです。
後悔のないお葬式にするため、互助会に入って今からお葬式の準備をしておくことをおすすめします。
まとめ
家族葬は一般的なお葬式よりも費用を抑えることができます。
しかし、費用を抑えられるといっても、家族葬の費用は平均でも『130万円~180万円』くらいはかかります。
ときどき格安葬儀の広告に魅力的な金額が出ていますが、故人と参列者に失礼のないようにしようとすれば、結局は平均くらいの金額を支払うことになりますので注意しましょう。
家族葬をする上で、
- 葬儀費用一式の費用
- 飲食の費用
- 返礼品の費用
- 僧侶へ渡すお布施
などが必要であり、これらを少しずつ減らしていくことで費用を抑えましょう。
しかし、費用を削減することばかり考えていると、お葬式全体がとても【質素】になってしまうので、重要な部分にはしっかりお金をかけてください。
家族葬でも一般的なお葬式でも、100万円以上の【大きな費用】がかかることに違いはありません。
お葬式で必要な【大きな費用】への対策として、『互助会』で事前に積み立てをしておくのもよいでしょう。
互助会に入会しておけば、お葬式で何が必要なのかを把握でき、事前に少しずつ葬儀費用を準備することができます。
どのようなお葬式であれ、納得のいくお葬式をするためには大きな費用が必要なので、今のうちから計画的に準備をしておきましょう。
※互助会への入会を検討するときはこちらの記事を参考にしてみてください。