お葬式で必ず使用する『祭壇』。
祭壇は葬儀式場内で1番奥の中央にあり、故人の遺影、供物、そしてたくさんの生花で飾られ、言ってみれば祭壇は【そのお葬式を象徴するもの】です。
私は僧侶として800回以上お葬式を見てきましたが、お葬式の印象は『祭壇』で決まるといっても過言ではありません。
祭壇にはいくつか種類があり、選ぶ祭壇によって【お葬式の印象】だけでなく【費用】も大きく変わりますので、何となく決めてしまうと後悔します。
でも、祭壇を選ぶといっても、何を基準にして、どんな祭壇を選べばいいのか分かりませんよね?
この記事では、
- 祭壇を飾る意味
- 祭壇の種類
- 祭壇の選び方や費用
について詳しく解説しています。
大切な人のお葬式を悔いのないものにするため、最後まで読んでいただき祭壇選びの参考にしてみてください。
祭壇選びは超重要事項ですよ。
祭壇を飾ることの意味
お葬式のときには、葬儀式場の1番奥の中央に『祭壇』を飾ります。
祭壇には、
- 故人の遺影
- 白木位牌
- 生花
- 供物
- 仏様の掛軸(一部の宗派のみ)
が飾られます。
本来の祭壇は、柩の周りに机や台を置いてその上にお供物や生花を供えるものでしたが、やがて壇の上部中央に白木製の『輿』がついた豪華な祭壇を飾るようになりました。
さらに近年では、『輿』があるものよりも、たくさんの『生花』を使用した祭壇が人気となっており、祭壇の形は時代とともに変化しています。
祭壇には故人の遺影や白木位牌が飾られ、僧侶の読経なども祭壇の前で行われるため、祭壇というのは【そのお葬式を象徴するもの】です。
ですから、故人にとって《最後の晴れ舞台》となるお葬式の印象は『祭壇』で決まります。
しかし、喪主はとても忙しくて祭壇選びに十分な時間をかけることができません。
お葬式において祭壇は非常に重要なのですが、時間に追われてつい《何となく》決めてしまう人が多いんですよね。
仏事系Webサイトの中には『祭壇は故人そのもの』と表現するところもありますが、まさにその通り。
私は【どんな祭壇が用意されているのか】を基準にして葬儀社を選ぶべきだとさえ思っています。
祭壇については、事前にじっくりと考え、家族とよく話し合って選ぶようにしましょう。
祭壇の種類
お葬式の祭壇にはいくつか種類があり、
- 白木祭壇(仏式祭壇)
- 花祭壇
- 日蓮正宗(≒創価学会)祭壇
- 神式祭壇
- キリスト教式祭壇
- オリジナル祭壇
などが使用されます。
祭壇によってお葬式の雰囲気はガラッと変わりますので、大切な人の【最後の晴れ舞台】のために、祭壇は慎重に選んでしっかりとお金をかけるべきです。
白木祭壇(仏式祭壇)
多くの人が『お葬式の祭壇』と聞いて思い出すのは【白木祭壇】でしょう。
白木祭壇とは、その名のとおり壇の上部中央に《白木の輿》がある祭壇をいいます。
輿というのは、簡単に言えば『人を乗せて人力で動かす乗り物』なので、お葬式の場合は《ご遺体を乗せる乗り物》ということです。
輿の周りには白色をベースとした、菊、百合、胡蝶蘭、カーネーション、バラ、カスミソウなどが飾り付けられます。
祭壇の上部中央に立派な輿を置いて、故人に対する敬意を表しているんです。
ちなみに、輿のある祭壇を使用するのは【仏式のお葬式】の場合が多く、そのため白木祭壇は《仏式祭壇》と呼ばれることもあります。
しかし、輿のある祭壇には白木だけではなく、色が塗られた【塗り祭壇】もあります。
白木祭壇を使う理由は、白色が《何にも汚されることなく清らか》や《新たな旅立ち》を象徴するため、清らかな仏の世界に旅立つ故人のお葬式の趣旨に適しているからです。
一方で【塗り祭壇】は、輿に金色などを塗り入れることで祭壇を豪華に仕上げ、華やかな雰囲気で故人を送り出そうという趣旨です。
輿のある祭壇は【白木祭壇】でも【塗り祭壇】でもどちらでもいいので、好みの方を選んでください。
長年使用されている白木祭壇は白木の色が黄ばんでいるので、輿のある祭壇にする場合、私なら【塗り祭壇】を選びます。
花祭壇
近年では白木祭壇を選ぶ人が減り、その代わりに【花祭壇】を選ぶ人が増えています。
花祭壇の使用率は地域によって違いますが、私の経験では全体の60%くらいだと思います。
花祭壇のメリットは、
- 祭壇のデザインの自由度が高い
- 式場の雰囲気を変えられる
などがあります。
花祭壇には輿がなく、たくさんの生花を飾って作り上げます。
飾られる生花の色も、白色がベースにはなりますが、その他の色もたくさん使用されるので華やかな雰囲気の祭壇になります。
花祭壇は使用する生花の、種類、色、量によってどのようにでも作ることができるためデザインの自由度がとても高いです。
花祭壇はデザインによって式場の雰囲気が大きく変わりますよ。
お葬式は故人の【最後の晴れ舞台】ですから、花祭壇で《個性》を作り出し、式場全体で故人らしさを演出してあげましょう。
日蓮正宗(≒創価学会)祭壇
白木祭壇には輿の周りに生花を飾ります。
しかし、日蓮正宗の場合は、生花よりも『樒』を中心に飾つけます。
樒という木は、年間を通じて緑色の葉が付いている【常緑樹】です。
この樒に対して日蓮正宗では、
花は美しいが、いつか枯れて散ってしまう。しかし、樒の葉はいつでも緑色で枯れて散ることがない。日蓮聖人や法華経の教えも樒のように枯れて散ることはない。
と考えています。
また、樒には毒があり鳥などが寄りつかないことから、樒は【魔除け】の効果があるとされている木なんです。
樒には強い香りがあるので、お焼香で使う抹香の原料としても使われていますよ。
じつは、樒の祭壇は日蓮正宗だけではなく『創価学会』でも使われます。
創価学会はもともと日蓮正宗に属する団体でしたが、教義の解釈の違いより現在では日蓮正宗から離れて独立した宗教団体となっています。
しかし、樒に対する考え方は同じであるため、お葬では祭壇に樒を使用しています。
神式祭壇
日本の場合、お葬式の多くは『仏式』ですが、その他にも『神式』で行う人もいます。
神式のお葬式でも【白木の祭壇】を使用するのが一般的で、祭壇の上部中央には白木で作られた『神輿(みこし)』があります。
神式の祭壇には、三種の神器(さんしゅのじんぎ)と呼ばれる
- 八咫鏡(やたのかがみ)
- 天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)
- 八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)
を飾り、祭壇の両脇には大榊を1対供え、祭壇の前には神饌物(しんせんもの)を供えます。
また、仏式の場合は式の途中で焼香をしますが、神式では焼香ではなく【玉串(たまぐし)】を捧げます。
念のためお伝えしますが、神式のお葬式では《数珠》は使用しませんので、神式のお葬式であることが事前に分かっていれば数珠を持って行く必要はありません。
数珠が必要になるのは【仏式のお葬式】だけです。
神式の祭壇は、一見すると仏式と同じように見えるかもしれませんが、飾り付けている物が違いますし、式中の作法も仏式とは違いますので注意しましょう。
キリスト教式祭壇
日本では『キリスト教』を信仰している人も多いです。
キリスト教式でお葬式をする場合は【教会】で執り行い、教会に常設されている祭壇に飾り付けをします。
キリスト教式の祭壇は、祭壇の上部中央に【十字架】があり、両脇にロウソクを立て、白色の花を少しだけ飾るというシンプルな飾り付けです。
仏式では宗派や僧侶の考え方によって飾り方が変わりますが、同じようにキリスト教式でもカトリックとプロテスタントで飾り方に違いがあります。
キリスト教式のお葬式をする場合、祭壇については事前に教会へ確認をしておきましょう。
オリジナル祭壇
あなたは「宗教や宗派にとらわれず自由なお葬式をしたい。」と思ったことはありませんか?
近年、なるべく自由なお葬式をしたいという人が急増しており、そのような人はお葬式のときに『オリジナル祭壇』で故人を送り出しています。
オリジナル祭壇というのは【故人の遺志】や【遺族の意向】により自由に作られた祭壇です。
オリジナル祭壇の例を挙げると、
- シンプルで現代的なデザインの祭壇
- 生前の故人の趣味をイメージした祭壇
- 決まったお花だけでなく、多くの種類の花を使用した華やかな祭壇
- 海や山など『自然』をイメージした祭壇
などがあります。
オリジナル祭壇のメリットは、とにかく自由に祭壇をデザインできるところ。
しかし、自由にデザインできるということは、言ってみれば『フルオーダーメイド』ですから、飾り方によっては決められた形の祭壇よりも費用が高くなります。
大切な人との【本当に最後のお別れ】なので、祭壇にはお金をかけていいと思いますよ。
祭壇の選び方
お葬式で使用する祭壇の種類を確認したら、次は祭壇を選びましょう。
祭壇の選ぶときには、
- 宗教・宗派に合わせて選ぶ
- 費用(予算)で選ぶ
- 故人の遺志を尊重して選ぶ
という方法があります。
宗教・宗派に合わせて選ぶ
これまで説明をしてきましたように、お葬式の祭壇は宗教や宗派によって違います。
お葬式の祭壇を選ぶ場合、基本的にはあなたが現在信仰している宗教や宗派に合わせて祭壇を選ぶようにしましょう。
特に、あなたの家のお墓が【お寺】にある場合は、そのお寺が属する宗派に合わせた祭壇を設けなくてはなりません。
あなたの家のお墓が【お寺】にあるということは、あなたの家にとってそのお寺は『菩提寺』となり、お葬式など仏事はすべてそのお寺に依頼する必要があるんです。
お寺にお葬式を依頼する場合、そのお寺が属する宗派のやり方で執り行いますので、祭壇もその宗派の飾り方に従いましょう。
宗教や宗派を無視してしまうと、後で間違いなくトラブルになります。
どうしても宗派に合わせた祭壇ではなく自由な形で祭壇を設けたい場合は、必ず菩提寺のご住職の許可を得るようにしてください。
費用(予算)で選ぶ
お葬式というのは全体の費用がだいたい100万円~200万円くらいかかります。
この大きな費用を削減するためには、たくさんあるお葬式のメニューの費用を少しずつ抑えなければいけません。
祭壇にかかる費用は比較的大きいため、祭壇は費用(予算)を重視して選ぶという人も多いです。
しかし、祭壇の費用というのはとても幅広く、
- 祭壇の種類
- 祭壇全体の大きさ
- 使用する生花の種類
によって大きく変わり、安いものだと10万円くらい、高級なものであれば180万円くらいするんですよね。
費用の範囲はかなり幅広いですが、あえて相場をいうなら『20万円~100万円』と考えておけばよいでしょう。
ただし、祭壇はなるべくケチらない方がいいですよ。
お葬式の最後には、祭壇から摘み取った花を棺桶に入れてあげます。
このとき、安い祭壇は花の量がとても少ないため、棺桶に入れる花も少なくて中がスカスカになってしまうのです。
あれは本当に故人が可哀想なので、ちゃんと中級レベル以上の祭壇を使ってあげてください。
故人が希望していたものを選ぶ
よく「祭壇はお葬式の規模に合わせて選びましょう。」と言われます。
しかし、僧侶の私としてはこの意見に反対です。
お葬式は故人のために執り行うもの。
お葬式の規模ではなく、故人が希望していたもの(=遺志)に合わせて祭壇を選んであげほしいです。
故人の希望が特になかった場合は、遺族として故人にどのようにしてあげたいかを考えて選びましょう。
たとえお葬式の規模とのバランスが悪くても、まずは故人が望むような祭壇を優先するように心がけてください。
まとめ
お葬式の印象というのは『祭壇』で決まりますので、お葬式の祭壇選びは非常に重要です。
祭壇の種類には、
- 白木祭壇(仏式祭壇)
- 花祭壇
- 日蓮正宗(≒創価学会)祭壇
- 神式祭壇
- キリスト教式祭壇
- オリジナル祭壇
があります。
祭壇を選ぶときには、
- 宗教・宗派に合わせて選ぶ
- 費用(予算)で選ぶ
- 故人が希望していたものを選ぶ
という方法で選んでください。
故人にとって【最後の晴れ舞台】であるお葬式の印象は祭壇選びで決まりますので、悔いのないように家族でよく話し合って慎重に選びましょう。
※互助会のコース内容についてはこちらの記事をご参考にどうぞ。