日本で行われるお葬式の多くは『仏式』です。
仏式でお葬式をする場合、お坊さんに故人の供養をしてもらい、必ず『お布施』を渡します。
しかし、お布施をいくら渡せばいいのか、そして、お布施の相場がどのくらいなのか分かりませんよね。
じつは、お葬式のお布施というのは、
- 戒名の【位(=ランク)】
- 地域
- 宗派
によって金額が大きく変わるため、お布施の相場をお伝えするのはとても難しいのです。
しかし、そこをあえてお伝えすると、お葬式のお布施の全国的な相場は『30万円~100万円』くらいでしょう。
本記事は、現役僧侶の私が『お葬式のお布施の金額』について、自身の経験をもとに詳しく解説しています。
できるだけ正確に葬儀費用の見積りをするため、参考程度に読んでみてください。
ある程度の目安にはなりますよ。
『お布施』とはどんなもの?
お布施というのは、簡単に言えば『見返りを求めず、自発的に差し出す(施す)こと』をいいます。
本来であればお布施の金額は喪主が自由に決めるもので、もっと言えば、お布施は【お金】である必要もありません。
お布施というのはあくまで【自発的な施し】であり、お坊さんに支払う『労働対価』ではないのです。
そのことはお坊さん自身も承知しており、「お布施の金額は、ご遺族の《お気持ち》で決めてかまいませんよ。」と喪主に配慮しているお坊さんもいます。
しかし、このような《お坊さんの配慮》は逆に喪主を悩ませてしまうことがあります。
喪主の本音としては、
- お布施はできるだけ安く抑えたい。
- でも、金額が少なくてお坊さんに対して失礼となるのは困る。
- それに、相場から離れ過ぎた金額を渡してしまい恥をかくのはイヤ。
ということなのですが、妥当な金額の見当がつかずに困るわけです。
その結果、多くの人はスマホやパソコンで『お葬式のお布施の相場』を調べます。
ただでさえ喪主は忙しいのに、『お布施の相場を調べる』という余計な手間が増えてしまうんですよね。
そのため、最近のお寺は喪主を悩ませないように、あえて『お布施の金額の目安』を伝えているところが多いです。
ですから、お葬式のお布施の金額は、とりあえずお坊さんに確認をしましょう。
それで「お布施はお気持ちで結構ですよ。」と言われてしまったら、後述する内容を参考にしてみてください。
お葬式で渡す『お布施』の金額の相場
お葬式のお布施の中には、
- 戒名料
- 供養料(読経料)
の2つが含まれています。
近年では、戒名をつけずに【俗名(故人の名前)】のままでお葬式をすることもあります。
戒名をつけない場合は供養料だけとなるため、それだけお布施の金額も減ります。
戒名をつける場合
お葬式をするときは、お坊さんに依頼をして故人に【戒名】をつけてもらうのが一般的です。
戒名とは『仏弟子としての名前』のことなので、お葬式をする目的は故人に戒名をつけて仏弟子になってもらうことなんです。
そして、戒名をつけてもらうには『戒名料』を納める必要があり、この戒名料によってお布施の金額が大きく変わってしまいます。
戒名にはいくつかの【ランク】があり、故人にどのランクの戒名を付けるかによって納める戒名料は変わります。
戒名料の相場としては以下のとおりです。
戒名 | 戒名料(法名料) |
釋・釋尼 | 20万円程度 |
信士・信女 | 10万円~50万円 |
居士・大姉 | 30万円~80万円 |
院信士・院大姉 | 35万円~100万円 |
院居士・院大姉 | 50万円~上限なし |
お葬式のお布施というのは『戒名料と供養料を合算したもの』なので、それをふまえた上で全国的なお布施の相場は『30万円~100万円』くらいです。
戒名料は決して安いものではありませんので、どのランクの戒名をつけてもらうかを家族でよく話し合いましょう。
戒名をつけない場合
近年では故人に戒名をつけず『俗名(=故人の名前)』のままお葬式をするというケースが増えています。
戒名をつけない場合のお布施は『20万円~30万円』が相場です。
そして、ここで大事なことをお伝えします。
もしも故人に戒名をつけないのであれば、無理に《仏式》でお葬式をする必要はないですよ。
先ほども言いましたが、仏式でのお葬式の目的は《故人に戒名をつけて仏弟子になってもらうこと》です。
つまり、戒名をつけないのなら、そもそも仏式で執り行う理由がないのです。
しかし、多くの人は『お葬式=お坊さんに来てもらう』というイメージが強いため、戒名をつけない場合でも仏式でお葬式をしようとします。
お葬式の形態はどんどん多様化していますので、戒名をつけない場合は仏式にこだわらず、故人や遺族の希望に沿ったお葬式をしてかまいません。
地域ごとの『お布施』の相場
お布施の金額というのは日本全国で統一されているわけではありません。
先ほど説明した【戒名のランク】だけでなく、お葬式を執り行う『地域』によってもお布施の金額は変わります。
お布施の金額の相場を地域ごとに分けると以下のとおりです。
地区 | お布施の金額の相場 |
北海道地区 | 30万円~35万円 |
東北地区 | 60万円~65万円 |
関東地区 | 50万円~55万円 |
中部地区 | 50万円~55万円 |
近畿地区 | 45万円~50万円 |
中国地区 | 40万円~45万円 |
四国地区 | 35万円~40万円 |
九州地区 | 30万円~35万円 |
冒頭でも言いましたが、お布施というのは条件によって大きく変わるため、相場をお伝えするのは難しいです。
上記のように地域ごとに相場を紹介していますが、同じ地域でも《その寺の住職の考え方》によってお布施の金額が変わります。
ですから、お布施の相場というのはあくまで【目安】という程度にとどめておきましょう。
お布施の金額については、直接お坊さんに確認するのが1番です。
宗派ごとの『お布施』の相場
お葬式のお布施は【戒名の位(ランク)】や【地域】だけでなく、お葬式をするときの『宗派』によっても金額が変わります。
宗派ごとの戒名料の違いについても相場をお伝えするのは難しいのですが、あえて言うなら以下のとおりです。
宗派 | お布施の金額の相場 |
天台宗 | 40万円~70万円 |
真言宗 | 50万円~70万円 |
浄土真宗 | 10万円~30万円 |
浄土宗 | 30万円~50万円 |
曹洞宗 | 30万円~100万円 |
臨済宗 | 30万円~50万円 |
日蓮宗 | 30万円~50万円 |
先ほどの【地域ごとのお布施の相場】と同じように、上記の金額はあくまで目安にすぎません。
同じ地域、そして同じ宗派であっても、お布施の金額というのは結局そのお寺の住職次第です。
トラブルにならないよう、お葬式のお布施についてはまずお坊さんへ確認をしてください。
確認した上で「お布施はお気持ちでかまいません。」と言わたら、そこで初めて上記一覧を参考にしてみてください。
『お布施』と『葬儀社へ支払う費用』は別です
お布施の相場を調べているあなたに1つ確認したいことがあります。
お葬式において【お布施】と【葬儀社へ支払う費用】は別だということをちゃんと認識していますか?
たまに『お布施=葬儀費用の全部』だと誤解をしている人がいます。
お布施というのはお坊さんに渡すもの、つまり宗教行為に対する御礼のようなものです。
一方で、祭壇料や棺桶代金といった葬儀社への支払いは、商品やサービスに対する対価です。
ですから、お葬式全体の費用は、【お坊さんへ渡すお布施】と【葬儀社へ支払う費用】を合算して考える必要があります。
【お坊さんへ渡すお布施】と【葬儀社へ支払う費用】を合わせると、だいたいお葬式全体の費用は100万円~200万円くらいなので、かなり大きな出費となります。
それで多くの人は【葬儀社へ支払う費用】の準備のために互助会へ入会しているんですよね。
《関連記事》:互助会に入った方がいい?互助会に入るメリットとデメリット
宗派にこだわらないなら浄土真宗がおすすめ
あなたが現在どこのお寺とも付き合いがない場合、お葬式をするときは宗派を自由に選ぶことができます。
僧侶の私が言ってはダメかもしれませんが、正直言ってお葬式はどこの宗派で執り行っても同じです。
どこの宗派であっても、お坊さんがしっかりと故人を仏の世界に送り出してくれますから。
もしもあなたが宗派にこだわらないなら、比較的お布施の安い『浄土真宗』がおすすめです。
浄土真宗はお布施が安いだけでなく、日本で最も信者の多い宗派なので安心して信仰できますよ。
ただし、あなたの家のお墓が【お寺の土地】にある場合は、残念ながら自由に宗派を選ぶことができません。
お寺の土地にお墓があるということは、あなたの家は『檀家(だんか)』という立場になっており、お葬式のときには必ずそのお寺のお坊さんがお勤めをします。
お寺というのは基本的にどこかの宗派に所属していますので、お葬式も所属する宗派のやり方で執り行われるのです。
まとめ
お葬式をする場合、一般的にはお坊さんに来てもらいます。
お坊さんに読経をしてもらい、故人に戒名をつけてもらって、その御礼の意味で『お布施』を渡します。
お布施の金額というのは、
- 戒名の【位(=ランク)】
- 地域
- 宗派
によって大きく変わります。
そのため、お布施の相場をお伝えするのは非常に難しいのですが、あえてお伝えすると、
- お布施の相場は『30万円~100万円』
- お布施を含む【お葬式全体の費用】の相場は『100万円~200万円』
となります。
お布施の金額については、トラブルを避けるためにも、まずはお坊さんに確認をしましょう。
それで「お布施はお気持ちで納めてください。」と言われたら本記事を参考にしてみてくだい。
お葬式では【お布施】と【葬儀社へ支払う費用】の両方が必要なので、どうしても大きな金額になってしまいます。
いざというときに急な大出費で慌てることのないよう、互助会で積み立てをしておくなど、今のうちからお葬式の準備を始めましょう。
※互助会を選ぶときはこちらの記事を参考にしてみてください。