もしも自宅で家族が亡くなったら、どう対応すればいいですか?想像したら何だか心配になっちゃって・・・。
状況によって対応は変わりますし、難しいとは思いますが、基本的には【現場保存】です。
もしも自宅で家族が亡くなっているのを発見したら、何をどうすればいいのか分かりませんよね。
きっと「とりあえず救急車を呼ぼう」と思うでしょう。
じつは、自宅で家族が亡くなった場合、救急車ではなく警察に連絡しなくてはいけないケースもあります。
しかし、家族が亡くなっているのを見たときに、何をするべきかを適切に判断できる人はあまりいません。
だからといって、対応を誤ると犯罪性を疑われ警察の聴取を受けることになります。
もしものときになるべく適切な対応ができるように、本記事を読んで事前に知識を入れておいてください。
- 自宅で家族が亡くなった場合の対応が分かります
- 検視について分かります
- 同居している家族に高齢者がいる
- 知人の家族が自宅で亡くなったと聞いた
- 念のために、自宅で家族が亡くなったときの対応を知っておきたい
この記事を書いている私『ちょっき』は僧侶になって29年です。お葬式を800回以上お勤めしてきた経験をもとに互助会に関する情報を発信しています。
自宅で家族が亡くなったときの対応
人間は、いつ、どこで、どのようにして死を迎えるか分かりません。
近年では、病院で亡くなる人が約80%ですが、自宅で最期を迎えたいという人がいたり、あるいは自宅内の事故で亡くなることもあります。
もしも家族が亡くなっているのを発見したら冷静ではいられませんよね。
何をすればいいのか分からず、とりあえず救急車を呼ぶでしょう。
しかし、状況によっては救急車ではなく警察を呼ばなくてはいけないケースもあります。
非常に難しいことではありますが、亡くなった家族の状態を見てから行動することが大事です。
できるだけ遺体に触れない
自宅で家族が明らかに亡くなっているのを発見したら、できるだけ遺体に触れないでください。
明らかに亡くなっている場合は、警察が自宅まで来て現場の検証することもあります。
しかし、遺体を動かしてしまうと、後で警察が現場の検証をするときに正しい判断ができなくなるので、できるだけ遺体には触れないようにしましょう。
ただし、見た目では亡くなっているかどうか分からない場合はすぐに救急車を呼びましょう。
人が亡くなっているかどうかなんて私たちには正確に判断できないので、生死が不明であれば救急車を呼んでください。
ちなみに、救急隊員は『社会死』の6つの条件をすべて満たしているかどうかで死亡の判断をしているそうです。
救急隊員が『社会死』と判断した場合は、病院へ搬送することなく警察に引き継がれます。
社会死とは【医師の診断を仰ぐまでもなく、体の状態から誰が見ても判断できる死】のことをいい、
- 痛みや刺激への反応が全くない
- 呼吸が全くない
- 脈拍が全くない
- 異常に体温が低い(冷たい)
- 瞳孔が開いたまま
- 死後硬直や死斑が出ている
この6項目のすべてを満たしていることが条件です。
私たちもこのような知識があってもよいとは思いますが、実際に『社会死』の判断するのは難しいでしょう。
ですから、自宅で家族が亡くなっていたら『できるだけ遺体には触れない』ということを覚えておいてください。
かかりつけの医師がいる場合はその医師へ連絡する
自宅で家族が明らかに亡くなっている場合、故人の『かかりつけの医師』がいれば、その医師に連絡をしてください。
かかりつけの医師が到着すると、
- 心臓拍動停止
- 呼吸停止
- 瞳孔散大・対光反射停止
- 睫毛(まつ毛)反射消失
これらを確認した後に死亡宣言をします。
死亡宣言をした後は、
- 死因が診療中の傷病によるものである
- 死亡時刻から24時間以内に『かかりつけの医師』の診察を受けている
- 死亡時刻から24時間以上経過していても、医師により死因が確認できている
という場合であれば、かかりつけの医師は死亡診断書を作成します。
一方で、上記以外の場合は【警察】に連絡をする必要があり、遺体は警察に引き渡されて検視をすることになります。
また、病院によっては自宅に医師が来ないケースもありますので、そのときは警察への連絡が必要です。
自宅に来た警察官は家族に対して事情聴取をしますが、それが「犯人扱いをされているようで嫌だ」という人もいます。
ですから、訪問診療をしてくれるような『かかりつけ医』を見つけて、今のうちからお世話になるのもよいと思います。
そうすれば、もし自宅で亡くなっても、日頃から診療を受けている傷病が原因で亡くなった場合はすぐに死亡診断書を出してもらえて、警察が来ることもありません。
かかりつけの医師がいない場合は警察へ連絡する
すでに『かかりつけの医師』がいるという人もいれば、そうでない人もいます。
『かかりつけの医師がいない』場合は、
- 亡くなっているか分からなければ救急車を呼ぶ
- 明らかに亡くなっていたら警察に連絡する
という対応となります。
亡くなっているか分からない場合は、まだ蘇生の可能性があるのですぐに救急車を呼びましょう。
しかし、明らかに亡くなっている場合で、さらに『かかりつけの医師』もいなければ、すぐに警察へ連絡し【現場保存】をしてください。
とはいえ、この【現場保存】が意外と難しいものです。
というのも、自宅で亡くなるケースで多いのが『入浴中』で、これは交通事故死よりも件数が多いのだそうです。
もしも家族が風呂で亡くなっていたら、すぐに浴槽から引き上げますよね。
そして、体にバスタオルなどをかけたり、人によっては寝間着を着せるかもしれません。
しかし、風呂で亡くなっていても遺体を動かすことはせず、『かかりつけの医師』がいない場合はすぐに警察へ連絡をしなくてはいけないのです。
そうはいっても、家族としては故人を裸のままにしておくことができず浴槽から引き上げます。
それで後で警察官からいろいろと聴取されることになります。
家族側の気持ちはよく分かりますが、『かかりつけの医師』がいない場合は【現場保存】が大事であることを知っておいてください。
自宅で亡くなると検視がある?
自宅で家族が亡くなった場合、警察への連絡が必要となるケースも多く、遺体の状態や現場の状況によっては『検視』が行われます。
検視とは何?
検視は、
- 遺体が【変死体】と判断された
- 表面的な確認だけでは事件性の有無がハッキリしない
というときに行われます。
遺体は警察署の霊安室に移送され、検視官に引き渡された後に検視が行われます。
検視でチェックされる主な項目は、
- 死因
- 死亡推定時刻
- 遺体の姿勢
- 遺体の損傷の具合
- 犯罪行為の証拠となる遺留品があるか
などです。
検視が必要となるケース
連絡を受けて現場に到着した警察官と警察医は、遺体の状況や死に至った経緯を確認し、現場の遺体が、
- 非犯罪死体
- 変死体
- 犯罪死体
上記のどれに該当するのか判断します。
そして、遺体が明らかに事件性のない『非犯罪死体』だと判断したら【死体調査(行政検視)】を行い、死因・身元・身体的特徴などを記録します。
同行の警察医も死体調査に立ち会い、事件性がない場合は死体検案書を作成し、ここで警察の役目は終了です。
自宅で亡くなった場合の多くがこの流れです。
しかし、遺体が『変死体』と判断されたときは、遺体を警察署へ移送した後に【検視】が行われます。
変死体として扱われるのは、
- 診療中の病気やケガがない状態での死亡
- 病死・自然死と断定できない
- 法令指定の感染症や中毒性が疑われる死亡
- 事故死(交通・スポーツ・転落・転倒・溺死・医療)
- 自殺・火事による死亡
- 自然災害による死亡
- 労働災害による死亡
- 独居で身元不明の人の死亡
- 犯罪の疑いがある死亡
などのケースです。
ただし、検視は遺体の【外表】を見るものであるため、遺体にメスを入れることはしません。
ちなみに、検視と似た言葉で『検死』がありますが、下記のとおり両者の意味は違います。
呼称 | 内容 | 担当 |
検視 | 検死、検案、解剖をまとめて『検視』と呼ぶことが多い。 遺体の状態や現場の状況の確認し、外表的に犯罪性の有無を判定する。 | 警察官、検視官 変死体の場合は医師も立ち会う |
検死 | 死因や死亡時の状況を医学的に究明する。 一般的に、検視をしてから場合によっては検死をする。 | 医師 |
法医解剖をするケース
検視をしても死因や事件性の有無がハッキリしない場合は、遺体にメスが入れられ法医解剖されます。
法医解剖をすることによって、死因、遺体の損傷の状態、死後の経過時間をさらに詳しく調べ、事件性が認められた場合は事件の全体像を明らかにしていきます。
法医解剖には、
- 行政解剖(承諾解剖)
- 司法解剖
があります。
行政解剖と司法解剖の違いについては下記のとおりです。
解剖の種類 | 内容 |
行政解剖 (承諾解剖) | 犯罪性は低いが、死因が特定できないときに行う。 家族の許可を得る必要あり。 |
司法解剖 | 犯罪性が高いときに行う。 裁判所から許可が出れば、家族の許可がなくても行える。 |
このように、遺体を解剖するときは、遺体の状態や犯罪性があるかどうかによって解剖の意図が違うのです。
検視にかかる時間
人が亡くなったときの状況によっては検視が必要ですが、検視にはどれくらい時間がかかるのでしょうか。
検視にかかる時間は、死因が自然死や病死であれば半日程度ですが、死因が特定できない場合や遺体の損傷が激しい場合などは数日~2か月程度かかることもあります。
検視や解剖が終わるまでは死亡の手続きや火葬ができませんので注意してください。
ちなみに、私がいる寺の信者様が《自宅の火災》で亡くなったときは、遺体が戻ってくるまでに1か月以上かかり、そのときはお葬式と49日忌法要を同日に執り行いました。
検視をしたときの費用
検視をすると費用がかかりますが、自治体によって金額は異なります。
検視の費用の相場は【約5万円】ですが、全額負担をしなければならない自治体では10万円を超える場合もあります。
ただし、検視は犯罪性の確認や死因の特定をするために法律で定められているものなので、公費が使われて家族の負担がない自治体もあるので確認が必要です。
とはいえ、検視の費用はかからなくても、検視の後の『検案料』や『死体検案書の作成手数料』がかかります。
また、遺体の搬送料などもかかるので、検視となったときの費用として【3万円~10万円】程度みておくといいでしょう。
また、司法解剖となった場合の費用は30万円程度ですが、司法解剖の費用は国が負担をしてくれますので家族の負担はありません。
原則として検視は拒否できない
いくら検視のためとはいえ、亡くなったばかりの家族の遺体を移送されて、さらにはメスを入れられてしまう可能性があるなんて、そんなの遺族としては嫌ですよね。
大切な家族の遺体なのですから、場合によっては検視を拒否したいと思うこともあるでしょう。
しかし、原則として検視を拒否することはできません。
なぜなら、検視をするのは死因の特定だけが目的ではなく、犯罪性の有無を確認する目的もあるからです。
刑事訴訟法第229条でも、
変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。《刑事訴訟法第229条1項》
と定められているので、家族であっても検視を拒否することはできません。
また、検視を行うと検視調書が作成されます。
家族としては死因の詳細を知りたいところですが、捜査上の書類であるため基本的には家族が検視調書を見ることはできません。
市区町村役場へ死亡届を提出する
医師から死亡診断書あるいは死体検案書を作成してもらったら、市区町村役場へ『死亡届』を提出します。
死亡届を提出するときの流れ
死亡届というのは一枚の用紙に死亡届と死亡診断書(死体検案書)が一緒になっていますが、下記表のように作成する人によって記入する場所が分かれています。
書類名 | 作成する人 |
死亡届 | 同居の親族、その他の同居者、亡くなった場所の家主・地主、家屋の管理人、土地の管理人 |
死亡診断書 | 主治医、かかりつけ医 |
死体検案書 | 監察医、警察に委託された医師 |
このように、死亡診断書や死体検案書は医師が作成し、死亡届を作成するのは《同居人の親族=遺族》です。
死亡届の提出先については、
- 亡くなった人の本籍地
- 亡くなった場所の所在地
- 届出人の住所地
これらのいずれかの市区町村役場となっており、提出の際は、
- 死亡届
- 届出人の印鑑
- 後見人など場合は、関係を証明する書類
が必要なので忘れず用意をしましょう。
また、死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなくてはいけないので注意してください。
他にも、死亡届を提出するときは、遺体を火葬するときに必要となる『埋火葬許可証』を一緒に取っておきましょう。
ちなみに、死亡届は複数部(できれば10部くらい)コピーを取っておくと安心です。
死亡後の手続きをするときには死亡届のコピーを使用する機会があり、例えば、
- 保険金の請求
- 年金の受給
- 携帯電話の解約
- 公共料金の名義変更
- 所有資産の名義変更
などのときにコピーが必要となります。
事前に葬儀社を決めておく
家族が亡くなった数日後には【お葬式】をしなければなりません。
そのため、遺族はお葬式の準備でとても忙しくて役場へ行く時間なんてありません。
そこで、忙しい遺族に代わって『葬儀社』が死亡届を提出することが一般的です。
じつは、死亡届の提出については代理人でも行えるので、葬儀社に任せた方が間違いがなく、しかも圧倒的にラクです。
お葬式で遺族は本当に忙しくなりますので、手続きなどはできるだけ葬儀社に任せてしまいましょう。
そして、いざというときに慌てないよう、今のうちから葬儀社を決めておくといいですよ。
人間はいつか必ず死を迎えるので、お葬式の準備は早めにやっておいた方が安心できます。
お葬式の準備をするために【互助会に入る】というのも選択肢の1つです。
互助会で葬儀費用の積み立てをしておけば、
- 会員割引でお葬式の費用を大幅に減らせる。
- 充実した施設や備品を格安料金で使用できる。
- 葬儀式場や遺体の安置所がすぐに確保できる。
- 葬儀場以外の会員専用の施設が利用できたり、会員だけの特典を受けられる。
などの大きな特典があります。
どうせお葬式の準備をするなら【お得な特典】を受けられる方がいいと思いませんか?
《関連記事》:互助会に入った方がいい?互助会に入るメリットとデメリット
まとめ
近年では、病院で亡くなる人が約80%ですが、もちろん自宅で亡くなることもあります。
自宅で家族が亡くなった場合、
- 明らかに亡くなっていたら、遺体には触れず、かかりつけの医師または警察へ連絡する。
- 生死が不明の場合は、救急車を呼ぶ。
といった対応をします。
また、自宅で亡くなった場合は、警察が介入し『検視』が必要となるケースがあります。
検視が必要となるのは、
- 診療中の病気やケガがない状態での死亡
- 病死・自然死と断定できない
- 法令指定の感染症や中毒性が疑われる死亡
- 事故死(交通・スポーツ・転落・転倒・溺死・医療)
- 自殺・火事による死亡
- 自然災害による死亡
- 労働災害による死亡
- 独居で身元不明の人の死亡
- 犯罪の疑いがある死亡
などのケースで、遺体の状態によっては『法医解剖』をすることもあります。
検視が必要なときは、たとえ家族であっても拒否はできませんので、ちゃんと警察に協力をして早く故人を返してもらいましょう。
人間は、いつ、どこで、どのようにして死を迎えるか分かりません。
家族が亡くなったときに備えて、今のうちから必要な知識を入れておきましょう。
※今からお葬式の準備をするなら互助会に入るのも有効な手段です。